タイトルは豊竹屋調に.
『ニッポンには対話がない』を読む.ここまで面白かった本はひさびさだと思う.以下雑感.
(平田)日本の国語教育は、一面で戦前の修身の代用品みたいにされてきたという歴史があって、どうしても、道徳的な読み取り、あるいは、規範的なことばの学習という傾向を、いまもずっと抱えています。
このことは『国語教科書の思想』の話にも通じるし,個人的な経験からいえば国語に限った話でもなかったとさえ思う.「型」が示されているのはまだマシな方で,何の手がかりもない状況から「『型』通りに勉強した痕跡を残せ」という意図を汲み取って,その「型」通りに振る舞わねばならない,という勉強を小学校の高学年の間はずっと押し付けられ,何もできなかった.思い出したくもない過去である*1.なぜいまだにこの考え方が現場からなくならないのだろうか.
中原先生も言及されているが,中高年男性の「上から目線」「自分の経験・知識の絶対化」の話は腹立たしくもあり,興味深くもある.問題はこれが世代要因(いまの中高年男性特有の傾向)なのか,発達要因(現在の若い世代が中高年になると現れる傾向)なのか*2,それともまた別の環境要因があるのか,といった点が気になる.発達要因だとしたらかなり嫌.
PISAのランキングに一喜一憂している人々がこれを読んだらどう反応するだろう.1994年の教育改革以後,PISAの調査でトップを獲ってもなお今日に至るまでのフィンランドの教育の現状,1995年EU加盟直後のEU議会でのフィンランド代表の行動,2006年調査の読解力調査でなぜ韓国がトップを獲れたのか,フィンランドへの各国の調査団による質問内容における日本とヨーロッパ各国の比較,などなど……
(北川)ヨーロッパ人と対話をすると、対立点を積極的に見つけていくんですよね。意図的にどんどん対立させていって、お互いが考えているところと少し違う次元のところに話をもっていこうとする。
協調学習の本来の目的はこれなのだが,互いが自分の意見を言いっぱなしになったり,単に相手の意見に「まあ,そういうこともあるよね」と共感して終わるだけのものになるケースも多い.このような対話を学習者が行える環境をデザインするには,技術が要る.それから,日常会話はともかくとして,研究の話はこうでありたいのだが,研究の現場でさえなかなかこのような対話をすることが難しい.
(北川)ぼくがフィンランドの大使館に赴任した当時に先輩や上司によく言われたことというのが、「わかり合おうなんて思っちゃいけない」ということです。これはベテランの外交官ほど言うんですけど、極端な人になってくると、「人間であるということ以外に共通点はないと思うくらいのつもりでしゃべらないといけない」と。
後日の話も読まれたし.この本を一読して最も衝撃を受けた箇所.外交の駆け引きのくだりは実に興味深い.このようなスキルの身につけ方は以前から興味がある.実は大学に入る前の段階で,理系寄りの勉強をしつつ認知科学に近い分野に進むか,国際関係論の方面に進むかを考えていた時期があり,その方面の大学も志望していた時期もあった.ひとまず前者に進んで現在に至るわけだが,後者に進んだらこういった現場のコミュニケーションの研究をしていたかも知れない.というより,今後このような一種の極限状況下のコミュニケーションの研究はぜひやってみたい.
もう少しまとめてから書くべきであろうとも思ったが,バラバラでも何か書かずにはいられない,そんな内容であった.
*1 昨年末の話だが,NHKの番組で地域間の学力格差について,全国学力調査の都道府県別の成績で首位であった秋田県の小学生の家庭学習の様子がとりあげられていた.その家庭学習はひたすら白紙のノートに漢字の書き取りをしているものであった.もちろん1人の児童の例だけで一般性はないかも知れないし,教師から指示された課題なのか白紙のノートを埋めるために自発的に考えた課題(私の小学校時代にはそんな課題があった)なのかわからないが,あまりに不毛な努力である.硬筆習字だったら鉛筆の使い方やら字形のバランスのとり方やらを考えるとか,漢字を覚えるなら覚えるべき漢字は何か考えるとか,そういったメタ認知が働くようなものであって欲しいと思うが,そんな形の努力はいまの教育現場では認められるのだろうか.
*2 発達要因という言い方は語弊があるかも知れない.この手の行動変容を起こす生理的な要因なんぞあったら怖いわけで,むしろ上の世代に影響されて「自分たちもこうならねば」という思い込みでこの手の行動が現れる可能性の方が高い.
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小学生の勉強はメタ認識でするよりパターン認識でこなすほうが正答率あがるのでは。
回答は長くなるので,以下にまとめました.<br>http://svslab.jp/0x0a/20090526.html#p01