もちろん,この先その分野をリードする研究者として,具体的で簡潔,かつ説得力のある理念を最初に述べ,エビデンス(客観的根拠)*1にもとづいて各論を展開するという形をつくり,論文執筆なり発表なり,偉い立場になれば講演なりをすることは大事である.本来事業仕分け作業においても,客観的根拠にもとづく議論であることが理想である.だが,どうやら今回の担当者は「私はそんな真面目な議論を求めていない,おもしろい話を聞きたいのだ」という相手だった模様で,こうした展開で話をしたとしても,おもしろさが伝わらなければ「春日ばりのズレたツッコミ」を食らっておしまいである.
私はリアルタイムでこのやりとりが見られなかったし,また探した限りでは記録も出ていない(科研費関連はあるのだが)し,ニュースや新聞記事の断片的な情報は参考にならないので,実際のやりとりから見られる印象は判断できない.だが,以前書いた内容を踏まえると,私が毛利さんの立場なら*2,この時自分の意見を通すために考慮するのは次に集約されそうである.
客観的証拠にもとづく的確な内容のツッコミ返し
かつ,議論の当事者だけでなく議論を観察する側にもおもしろさの伝わるツッコミ返し
そして,単に議論が盛り上がりました,ケンカしてました,ではなく「○○さんの『△△すべき』という意見が出てきた」という話が,メディアを通じて前面に出るようになることが目標である.エビデンスにもとづく議論をほとんど経験しなかった相手にいきなりお作法通りの方法論で向かっても,議論の相手にもその周りにいるお作法のわからない人間にも理解されづらい.こうした相手に対しても,エビデンスにもとづく主張を通すことが重要になる*3.
*1 エビデンスという用語は,日本語で書くとまどろっこしくなる「客観的根拠」という概念を簡潔に言い表せる用語なので私もよく使う.だが,その意味は「客観的根拠」であり,その「客観性」がどこで保証されているのかまで目を向ける必要がある.単なる思いつきやでっち上げはエビデンスにならないのだが,この点が混同されないか心配.以前タモリ倶楽部でもエビデンスをわかりやすい日本語に言い換えようとしたが「エビデンスはエビデンスのままでいい」という話があった.
*2 そこのあなた,「お前じゃ無理だ」とか言わないように.そういうツッコミは承知の上で話をするから.
*3 まあ,研究者同士の議論であっても,エビデンスにもとづく議論をまともにやれる場はせいぜい論文の査読くらいだろう.そしてその査読にしても『アカデミア・サバイバル』で非難されているような査読論文のよい点を評価せずにひたすらあら探しに終始するのみにとどまることもあり,エビデンスにもとづく建設的な議論はそう簡単にできるものではない.ところで私はちゃんと相手の研究のよい点を評価しようとしているが,どうも相手に伝わりづらいらしい.あえて他人と違う視点で評価しようとしているからというのもありそうだが,何にせようまい方法を模索せねばと思う.
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